カスハラ対応を徹底解説!弁護士と大学教授が企業に求められる対策を探る【セミナーレポート】
株式会社 KiteRaは2024年4月22日に「カスタマーハラスメント(以降カスハラ)」をテーマにしたWebセミナーを開催しました。成蹊大学法学部教授 原 昌登氏と使用者側弁護士 向井 蘭氏が登壇しました。
本記事では第2部 パネルディスカッションから、「カスハラ対応」と「ポスターの効果」についてのトピックをご紹介いたします。録画セミナーの視聴はこちらからお申し込みできます。
プログラム 第1部 カスタマーハラスメントの法規制の動向と企業に求められる適切な対策とは 第2部 パネルディスカッション 第3部 KiteRa Proのご紹介 第4部 質疑応答 |
※(関連記事)カスハラとは?クレームとの違いや具体例と企業がすべき対策を解説
カスハラ対応について
カスハラ対応に切り替えるタイミングについて
向井 蘭氏
「大声、長時間、頻繁、執拗、一定時間などは、企業独自に、カスハラの客観的な基準として定義をしていいでしょうか?」
原 昌登氏
「時間や回数などは、客観的な切り口になり得ます。客観的な基準は、企業ごとに決めていいことだと思います。しかし、現実的には、一社だけで決めるのは難しいので、業界団体で決めることも有益です。ただ、団体がいくつかあるような場合は、業界団体で決めるというのも難しい。そのような場合には、より大きな枠組み、例えば行政(国や自治体)で、目安となる数値などを設定するということも、一つの選択肢になると思います」
110番通報の前の事前警告について
向井 蘭氏
「110 番通報をしてください、と私も仕事で言うことはありますが、いきなり通報したくないというお客様は多い。通報の前に、イエローカードとか、事前警告をしたいというお客様の声を聞きます。事前警告はやってもいいのでしょうか?」
原 昌登氏
「110番通報はハードルが高いという場合、事前警告することは適法であると感じました。事前警告の中身がキツすぎれば、問題になる可能性はありますが、例えば「あなたの対応はもうお店として認められませんので、これ以上続くようでしたら、警察に通報します」といった内容を伝えることは問題ないと思います。あらかじめきちんと伝えて、相手が我に返って反省すればよいですし。110番通報前の事前警告は、相手に冷静なるチャンスを与えてもいますので、有効に機能する可能性があると思います」
出入り禁止の基準について
向井 蘭氏
「特定のお客様を『出入り禁止』にしたい、と聞くことがあります。出入り禁止の基準は、民間企業の場合、独自で設けても良いのでしょうか。例えば、先ほどの事前警告を 2 回しているお客様を出入り禁止にするなど、です。」
原 昌登氏
「行政の場合だと、出入り禁止という対応は難しいと思いますが、民間企業が提供するサービスは、法的には、企業と客の間の「契約」になると考えられます。どうしても契約を結びたくない相手との契約を強制するということは、法的にはできないと思います。そのため、出入り禁止の基準を決めて、特定のお客とは、もうそれ以降は契約を結ばない、サービスは提供しないということは、あり得ると思います」
土下座の強要について
向井 蘭氏
「土下座の強要は、刑法上、強要罪に該当すると認識しても問題ないでしょうか」
原 昌登氏
「土下座を相手にさせる権利は誰も持っていないと思います。土下座とは、床に頭をこすりつけるということですよね。そこまで要求する権利があるとは法的に言えないと思います。相手に土下座をしろと求めていくことは、それ自体、法的に問題があって、状況によっては犯罪に該当するとも考えられます」
カスハラの事実を裏付ける証拠について
原 昌登氏
「カスハラは、突発的に起きることも少なくないので、証拠を残しておくことは難しい面があると思います。オーソドックスな話になりますが、録音や録画は証拠の一つになります。例えば、コールセンターであれば、通話を『録音します』ということがデフォルトになりつつあるようですが、顧客側に録画や録音の可能性があると伝わるだけでも、顧客側が冷静になるきっかけになり得ると思います」
向井 蘭氏
「最近はコールセンター等でも事前に『この電話は録音しております』旨のアナウンスが流れることがほとんどですね」
ポスターの効果
(出典)職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)
向井 蘭氏
「こちらは、注意喚起を促しているポスターです。これらのポスターは、これから増えると思います。ポスターをお店に貼ることも有効な手段になりますか?」
原 昌登氏
「はい、その通りです。注意を促すということが必要だと思います。「お客様は神様」という言葉がありますが、お客様も(神様ではなく)「人」です。例えば店員の方や取引の担当者の方と、「人」として対等なはずです。お客様であっても、相手の人格を否定するとか攻撃するとかいったことは許されません。お客様だから何でもあり、ではないのです。カスハラは業界によっていろいろなケースがあると思いますので、ポスターも様々なものが作られていくと、『カスハラはダメだ』という社会全体の認識へつながっていくと思います」
(出典)札幌市 カスタマーハラスメント防止啓発の取り組み
向井 蘭氏
「こちらは、札幌市の広報部が作ったものです。ちょっと違う観点からの注意喚起になります。『自覚無くカスハラしていませんか』というメッセージが込められています。カスハラをする側は、暴言をしているなどの意識がなくて、自分が正しくて教えてあげている、教育してあげている、と思っている可能性があります。カスハラをする側には、ご本人の間違った正義感とかがあるのかもしれない。そういったところに注意を喚起する必要もある。こういうポスターも各社、工夫して作るといいかなと思いましたね」
原 昌登氏
「カスハラの定義はもちろんこれからですけれども、カスハラするつもりはなかったという言い訳は、少なくとも法的には通用しないと思います。悪気がなかった(だから、例えひどい言動があってもカスハラには当たらない)というのは、基本的に通用しないという理解を広めていくことも大切です」
まとめ
カスタマーハラスメントは、東京都が全国初となる「カスハラ防止」条例の制定について検討しているように、これから対策の輪郭が見えてくると思います。人事労務担当者の皆さまにとって、日常業務をこなしつつの情報収集は、大変なことだと思います。株式会社 KiteRaは、セミナーやWebメディア「キテラボ」を通じて情報を発信しています。情報収集の手段の一つとして、ご活用頂ければ幸いです。
※(関連記事)カスハラとは?クレームとの違いや具体例と企業がすべき対策を解説
録画セミナーの視聴は下記のリンクからご確認ください。
弁護士と大学教授が解説 カスタマーハラスメントの法規制の動向と企業に求められる適切な対策とは
こちらは2024年4月22日に実施したセミナーの動画となります。多くの参加者の皆様からご好評を頂きましたため、録画動画を公開することとなりました。 セミナー概要 近年、顧客から従業員への迷惑行為を指す