人事労務担当者が7月~9月に取り組むべき事項
7月から9月にかけて、人事労務担当者が取り組む事項を把握できていますか?
とくに7月は算定基礎届や労働保険料の更新など、重要な手続きがあります。
期限に間に合うよう、スケジュールを立て進めていくことが大切です。
この記事では、人事労務担当者が7月~9月に取り組むべき事項について解説します。
加えて、算定基礎届や労働保険料の更新時の注意点を詳しく解説しますので、手続きが不安な方は、ぜひご覧ください。
人事労務担当者が7月~9月に取り組む事項
7月から9月にかけて、人事労務担当者はさまざまな業務に取り組む必要があります。
ここでは、月ごとに重要な取り組み事項を解説します。
7月に取り組む事項
人事労務担当者が7月に取り組む事項は以下のとおりです。
- 算定基礎届の提出(7月10日まで)
- 労働保険の年度更新(7月10日まで)
- 高年齢者雇用状況報告書・障害者雇用状況報告書の提出(7月15日まで)
まず重要なのは、算定基礎届の提出です。
算定基礎届(定時決定)は、4月〜6月の給与をもとに従業員の社会保険料を改定する手続きです。
従業員の1年間の社会保険料を決定する手続きになるため、適切に計算したうえで7月10日までに作成・届出する必要があります。
そして労働保険の更新は、年に1回前年度の概算保険料を精算する確定保険料と新年度の概算保険料を7月10日までに申告・納付するための手続きです。
1年間に支給した給与と賞与を集計し、労働保険料率をかけたうえで確定保険料と概算保険料を算出します。
加えて、高年齢者雇用状況報告書と障害者雇用状況報告書の提出も忘れてはいけません。
毎年6月1日現在の高年齢者と障害者の雇用状況を7月15日までにハローワークに提出します。
これらの手続きや報告書の提出は法的に義務づけられており、期限までに必ず提出しなければいけません。期限に間に合うよう、事前に準備とスケジュール管理をしたうえで、手続きと報告書の提出を行いましょう。
8月に取り組む事項
8月は、多くの従業員が夏季休暇を取る時期ですが、人事労務担当者にとっては有給休暇の取得促進と年5日取得義務を考える時期でもあります。
有給休暇は従業員の権利ではありますが、年5日取得が義務化されているため、企業は取得しやすい環境づくりが必要です。
休暇計画の実施や休暇取得の啓発活動など、適切な取得促進策を実施することで、年5日取得の義務を果たしつつ従業員の満足度の向上につながる施策を講じましょう。
9月に取り組む事項
9月は、7月に提出した算定基礎届によって社会保険料が改定される月です。
新しい標準報酬月額の確認し、給与計算を誤らないよう注意しましょう。
とくに社会保険料を当月徴収している企業は、9月の給与から社会保険料が改定されるため、標準報酬月額の変更が必要になります。
また、社会保険料を翌月徴収している企業では、9月末の退職者から翌月分とあわせて2ヶ月分を徴収するため注意が必要です。
退職者の標準報酬月額が9月分から改定された場合、徴収する保険料が8月分と9月分とで異なる場合があります。そのため、現在の標準報酬月額と新しい標準報酬月額の両方を確認して2ヶ月分を徴収する必要があります。
給与計算の担当者は、間違えやすいポイントになりますので、十分注意して計算を行いましょう。
算定基礎届作成時の注意点
ここからは、人事労務担当者が取り組むべき事項として、とくに重要な算定基礎届の作成における注意点を紹介します。
主な注意点は以下の3つです。
- 月額変更者(随時改定)の確認
- 通勤手当の支給時期の確認
- 産休・育休・休職者の対応
それぞれを詳しく解説します。
月額変更者(随時改定)の確認
随時改定とは、固定的賃金が変動し、変動月以降継続した3ヶ月間で標準報酬月額が2等級以上の差が生じたときに行う社会保険料の改定です。
定時決定は固定的賃金の変動にかかわらず1等級でも差があった場合に改定されますが、随時改定は固定的賃金の変動と2等級以上の差が改定の条件となります。
そして、定時決定の対象となる4月~6月で随時改定の条件に当てはまる従業員は、随時改定を優先することになります。
そのため、随時改定の条件に該当する従業員は、別途月額変更届を作成して7月に提出しなければいけません。
通勤手当の支給時期の確認
算定基礎届の報酬を計算するうえで、3ヶ月の定期代を支給している企業は、通勤手当が二重に計算される可能性があります。
たとえば、3月・6月・9月・12月に3ヶ月定期代を給与で前払いしている場合に、4月1日入社の従業員に対して4月給与で4月~6月分を支給し、6月に7月~9月分を支給したケースです。
本来なら、3月給与に支給するはずの通勤手当が4月に支給されているため、そのまま定時決定の報酬を計算すると、4月と6月で通勤手当が二重に計算されてしまいます。
通勤手当が何月分なのかを把握したうえで、算定基礎届を作成しましょう。
産休・育休・休職者の対応
産休や育休、休職者は4月~6月に給与の支払いがない場合があるため、イレギュラーな対応が必要です。
もし4月~6月すべての給与が無給であった場合は、報酬を0円としたうえで、備考の「病休・育休・休職等」にチェックを入れる必要があります。
また、産休が5月1日からなど4月~6月の途中で休業に入った従業員は、支払基礎日数が17日以上ある月のみで算定を行います。
このように、産休や育休、休職者がいる場合は、それぞれイレギュラーな対応をしなければいけないことを覚えておきましょう。
労働保険の年度更新時の注意点
人事労務担当者が7月に取り組む事項として、労働保険料の更新も重要な手続きの一つです。
労働保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間に支払った賃金の総額に、その事業ごとに定められた保険料率を乗じて算出されます。
その際に注意することは以下の2点です。
- 労働の対償として支払う賃金
- 出向者の労災保険料
それぞれを詳しく解説します。
労働の対償として支払う賃金
労働保険料の対象となる賃金は「労働の対償として支払う賃金」です。
「労働の対償として支払われたもの」とは以下の条件を満たす賃金をいいます。
- 実費弁償的なものでない
- 任意的、恩恵的なものでない
たとえば、出張旅費や結婚祝金など、労働の対価ではない賃金は対象となる賃金には該当しないため、労働保険料の計算の際に除く必要があります。
出向者の労災保険料
出向者の労災保険料は、「出向先」が負担する義務があります。
そのため、自社の従業員が出向している場合は、その従業員の賃金を除いて労災保険料を計算しなければいけません。
一方、出向者を受け入れている場合は、出向者分の賃金を含めて労災保険料を計算する必要があります。
出向者または受入出向者がいる場合は、企業間のやり取りが発生するため、事前に出向者の情報を把握しておきましょう。
まとめ
人事労務担当者が7月~9月に取り組む事項は以下のとおりです。
- 7月:算定基礎届の提出、労働保険料の年度更新、高年齢者・障害者状況報告書の提出
- 8月:有給休暇の促進
- 9月:社会保険料の確認と改定
人事労務は、正確な業務遂行と効率的な時間管理を両立することが、円滑な組織運営につながります。
それぞれの事前にスケジュールを立て、余裕を持って取り組むことが大切です。
※本記事の情報は2023年11月13日時点の情報に基づき執筆しております。