育児介護法改正の疑問に答えます 「労使協定は?」「意向聴取や配慮とは?」など(第2回)
社会保険労務士の北 光太郎です。
2025年育児介護休業法改正の施行が、いよいよ迫ってきました。
皆さん、準備は順調に進んでいるでしょうか?
「法改正内容は分かったけど、具体的な対応のイメージがつかない」「似たような単語が多く混乱している」という方も多いのではないでしょうか。
2025年育児介護休業法改正について、人事労務担当者が抱える20個の質問について、全4回の記事で回答します。皆様の業務のご参考になれば幸いです。
※「Q1 就業規則の修正が必要となる箇所について教えてほしいです」「Q2 規定例など、参考にできる資料はありますか?」については、第1回のこちらの記事をご参考ください。
Q3 労使協定は締結し直す必要がありますか?
今回の改正によって子の看護休暇、介護休暇について労使協定による勤続6ヶ月未満の労働者の適用除外が廃止になります。
それに伴い、子の看護休暇・介護休暇で勤続6ヶ月未満の労働者を適用除外としている企業は、労使協定の再締結が必要です。
Q4 労使協定で対象から除外できる労働者について、もう少し詳しく教えてもらえますか?
改正前は、子の看護休暇や介護休暇の取得対象者から継続して雇用された期間が6ヶ月未満の労働者を労使協定により除外することが可能でした。
今回の改正により、継続して雇用された期間が6ヶ月未満の労働者を除外する仕組みが廃止となります。そのため、改正後は継続して雇用された期間にかかわらず、すべての労働者が子の看護等休暇や介護休暇を利用できるようになります。
参考:厚生労働省「令和6年改正育児・介護休業法に関する Q&A」
Q5 「意向聴取」や「配慮」といった言葉があります。整理してほしい。
法改正により、労働者が「妊娠や出産等を申し出た場合」や「労働者の子が3歳になる前」に事業主は個別の意向聴取を行い、その事情を考慮する必要があります。
個別の意向聴取とは、労働者が妊娠や出産等を申し出た際、または子が3歳になるまでの間に、適切なタイミングで労働者の希望や意向を個別に確認することです。意向聴取では、始業及び終業の時刻等の勤務時間帯や勤務地(就業の場所)、両立支援制度の利用期間、労働条件の見直しなどについて、労働者に希望がないかを確認します。
一方、配慮とは、事業主が意向の聴取をした労働者の就業条件を定めるにあたって、聴取した意向も踏まえつつ、自社の状況に応じて「配慮しなければならない」とされたものです。
配慮の具体例としては、勤務時間帯や勤務地の調整、業務量の見直し、両立支援制度の利用期間の見直し、労働条件の見直しなど自社の状況に応じて、その意向に可能な範囲で配慮することが求められます。
参考:厚生労働省「令和6年改正育児・介護休業法に関する Q&A」
Q6 意向聴取の内容が「就業に関する条件」と聞きましたが、具体的には?
「就業に関する条件」とは、主に以下の条件を指します。
- 始業及び終業の時刻等の勤務時間帯
- 勤務地(就業の場所)
- 両立支援制度の利用期間
- その他、仕事と育児の両立の支障となる事情の改善に資する就業に関する条件
なお、「その他、仕事と育児の両立の支障となる事情の改善に資する就業に関する条件」とは、障害のある子を養育していたり、ひとり親などより一層配慮が求められる労働者に対する就業の条件の希望を確認するなどが考えられます。
参考:厚生労働省「令和6年改正育児・介護休業法に関する Q&A」
Q7 聴取した意向について、事業主はどのように配慮すればよい?また、労働者の希望は必ず叶える?
今回の改正では、子育て世帯が「共働き・共育て」を実現できる環境を整えるため、事業主に対し、労働者から仕事と育児の両立に関する個別の意向を聴取し、その意向に配慮することが義務付けられています。
具体的には、勤務時間帯や勤務地の変更、業務量の調整、両立支援制度の利用期間の見直し、労働条件の見直しなどの配慮です。
ただし、事業主は必ずしも労働者の希望にすべて応える義務があるわけではありません。労働者からの意向を踏まえて対応を検討した結果、自社の状況に応じた決定をすればよいとされています。
もし労働者の意向に沿った対応が難しい場合には、その理由を丁寧に説明し、誠実な対応を心がけることが大切です。
なお、労働者の子に障害がある場合や医療的ケアを必要とする場合には、短時間勤務制度や子の看護等休暇などの利用期間を延長するといった対応が望ましいでしょう。加えて、ひとり親家庭であれば、子の看護等休暇の付与日数を増やすなどの配慮も考えられます。
参考:厚生労働省「令和6年改正育児・介護休業法に関する Q&A」
Q8 所定外労働の制限(残業免除)は、労働者から申出があった場合に必ず認めますか?
労働者から所定外労働の制限(残業免除)の申出があった場合には、事業主は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、認めなければなりません。
「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するかどうかは、その労働者が所属する事業所の状況を基準に、担当している作業の内容や業務の繁閑状況、代替要員の確保の難しさなど、様々な要素を考慮して客観的に判断されます。事業主が単に「業務上必要だから」という理由だけで申出を拒否することは認められません。
参考:厚生労働省「令和6年改正育児・介護休業法に関する Q&A」
Q9「柔軟な働き方を実現するための措置」を利用している期間中に、所定外労働の制限(残業免除)を同時に請求できますか?
同時に請求することは可能です。
たとえば、所定外労働の制限(残業免除)を請求する労働者にフレックスタイム制が適用されている場合でも、所定外労働の制限(残業免除)を同時に行うことができます。
参考:厚生労働省「令和6年改正育児・介護休業法に関する Q&A」
キテラボ編集部より
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規程管理システムとは!?社労士が人事労務担当者向けにメリットを解説します
規程管理システムとは、各企業が独自に定める社内ルール「社内規程」の作成・改定・管理を行うためのシステムのことです。専用のシステムを使うことで、効率的かつスムーズな作業が実現できます。
※育児介護休業法改正の内容については、下記の資料(23ページ)でまとめています。合わせてご確認ください。
2025年施行 育児介護休業法改正
この資料でわかること 2025年4月1日施行の改正内容 2025年10月1日施行の改正内容 雇用保険法の改正内容 企業の対応が必要なこと 出生後休業支援給付金の紹介 など 2025年の育児・介
※第3回、第4回は近日公開予定です。