IPOを目指す企業が「必ず知っておくべきこと」~社内規程整備のポイント~
この記事では、2022年7月7日に開催されたみらい創生監査法人 代表社員 中谷 仁様によるセミナー「IPOを目指す企業が『必ず知っておくべきこと』」の内容をもとにIPOを目指す企業が知っておくべき社内規程整備のポイントについてご紹介します。
同時に開催された株式会社KiteRa 代表取締役CEO 植松 隆史によるセミナーの概要についてはこちらからご覧ください。
株式上場のステップ
まず株式上場までのステップについてご紹介します。
IPOを目指す企業では上場申請年度の3年前から準備を始める必要があります。多くの場合、監査法人を探すというところからスタートしますが、監査法人の役割として、短期調査(ショートレビュー)と呼ばれる株式上場にあたっての課題を検討し報告する調査が挙げられます。
IPOを目指す企業は、調査の内容に沿って上場準備を進めていきます。具体的には、3期前を目安に「コーポレートガバナンスの整備」を、2期前を目安に「内部管理体制の整備」として諸規程の整備やマニュアルの見直しを進めていきます。
上場準備の目的
上場準備は、経営の透明性を高めること、もしくは経営の透明性を高めるための準備をすることとも言えます。企業を取り巻く利害関係者、例えば、株主・投資家、地域社会、金融機関の方が見た際に「何をしてる会社なのか」「どのような考えを持った会社なのか」「将来どのような会社になろうとしているのか」がきちんとわかる状態になっていることが大事となります。また、「財務状況に問題はないか?」「不正はしてないか?」といったことをしっかりと説明していく必要があります。上場準備を通じ、経営の透明性が高められるよう組織的経営を行う土台を整えていかなければなりません。
コーポレートガバナンスの重要性
コーポレートガバナンスは、会社の不正行為を防止するとともに、競争力収益力を高め、中長期的な企業価値向上に向けた組織経営を支える仕組みとも言えます。具体的には組織の設計、そして取締役会や監査役など内部統制の仕組み作りです。
まず組織の設計ですが、ベンチャー企業では代表を中心としたフラットな組織としてスタートすることが多いかと思います。成長する中で営業部門ができたり、管理部門ができたり、人事部門ができたりと組織が作られていきますが、組織をどう設計をしていくのかが大事になります。また組織を発展させていく中で、内部統制システムをつくり、不正が起こらないような仕組み、業務が効率的に回っていくような仕組みを整えていく必要があります。
また、上場企業に向けた規範・行動原則である「コーポレートガバナンス・コード」が2021年に改定され、株式市場のグローバル化が進む中、海外投資家からの要請が厳しくなるなど、今後もコーポレートガバナンスは強化されると考えられます。
社内規程の必要性
コーポレートガバナンスの実効性を確保するために必要なのが社内規程です。社内規程は、会社の業務が組織的に運営されるために必要なルールを明文化したものであり、属人的な運用から組織的な運用へと移行させるために必要なものです。
例えば、ベンチャー企業では社長が中心に組織を導いていくことが多いかと思いますが、組織が大きくなると、社長がすべて一人でやるわけにはいきません。そこで、業務を分割し(業務分掌)、権限を移譲すること(職務権限)が必要になり、そこで役立つのが社内規程なのです。
社内規程の一般例として、以下のようなものが挙げられます。
業務関連規程などは業務プロセスや業務フローがしっかりと固まっていない中で作っていくと、あとから見直しが必要となりますので、業務がある程度固まってから作成するようにしましょう。
職務権限と業務分掌
次に、職務権限と業務分掌について解説します。職務権限では、組織の規模に合わせて、各役職者に権限を付与、委譲していきます。一方、業務分掌では、個人に紐づいた仕事を切り分け、組織に紐づけることで、業務負荷の平準化、効率化を計ることが狙いです。
職務権限や業務分掌を整えることは、個人経営から組織経営に変化する過程の第一歩ですが、最初からすべて作り切る必要はありません。
業務分掌であれば、まずやるべき業務を細分化し、まとめていきます。その際、組織の変更にも対応できるように、業務を最小単位で切り出すと良いでしょう。また、会社が成長し、新たな業務が発生すると、業務分掌にも新しい業務が追加されることになります。
次に職務権限ですが、ポリシー、方針を決める必要があります。権限を社長に集中させる集中型の権限にするのか、権限を委譲させるていくのかを定めます。その際、業務フローやレポートラインなど、実務上のポイントをまとめておくと良いでしょう。
規程整備の6つのステップ
一般的に規程整備のステップとしましては6段階で考えられます。
- 現在の課題を洗い出す「現状分析の実施」
- 自社の規模に合った管理を検討する「必要な管理水準の設定」
- 職務権限、業務分掌を行う「実際の制度設計」
- ルールを文書としてまとめる「文章化」
- 文書化されたルールを会社として公的なものにする「承認」
- 作成したルールを実際に運用するための「社内への周知徹底」
ここでは、規程を整備するステップに注意が向きがちですがそれ以上に規程の運用が重要となります。規程の内容が実務でもしっかりと運用されているかどうかは、監査法人からの内部統制監査や、上場時の上場審査でもしっかりと確認される箇所です。企業規模、ステージに合った規程を整備し、きちんと運用していけるようにしましょう。
まとめ
社内規程の整備といっても1から作られるケースは多くなく、テンプレートを用いて整備していくことになります。しかし、ベンチャー企業が大企業の規程を流用し規程を作成してしまうと、実態規模とあわず、運用できない規程となる恐れがあります。
社内規程の整備を行う際には、ビジネスを起点にし、職務権限、業務分掌を行い、自社の実態にあった、運用できる規程となるように注意が必要です。
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