IPOプロセスにおける内部統制の重要性と社内規程の位置づけ

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KiteLab 編集部

この記事では、2022年7月7日に開催された代表取締役CEO 植松 隆史によるセミナー「IPOプロセスにおける内部統制の重要性と社内規程の位置づけ」の内容をもとにIPOを目指す企業が知っておくべき社内規程整備のポイントについてご紹介します。

同時に開催されたみらい創生監査法人 代表社員 中谷 仁様によるセミナーについてはこちらからご覧ください。

IPOプロセスの厳格化

2018年度に東京証券取引所にてIPOの申請をした会社のうち、約2割にあたる46銘柄が承認に至りませんでした。IPOプロセスの厳格化が進む中、企業にはコーポレートガバナンスをきちんと整えていくことが求められています。

IPO審査で問題となる点

次に、IPOの承認に至らなかった理由を見ていきましょう。各種法令への遵守体制、子会社管理等の業務上必要とされる管理体制、オーナー経営者に対する牽制体制の構築状況が不十分であるなど、内部管理体制等に係る上場審査基準を満たさないケースが挙げられます。

また、未払い残業代や名ばかり管理職など、労使間のトラブルにも注意が必要です。時効の期間までさかのぼっての請求があった場合、金額が非常に大きくなります。また、従業員との信頼関係を失い、労使間のトラブルに発展する要因になります。

こうした問題が起こらないよう社内規程を整備し、内部統制ができている必要があります。

内部統制の基本的枠組み

内部統制について、金融庁の資料では以下のように書かれています。

「内部統制は、社内規程等に示されることにより具体化されて、組織内の全ての者がそれぞれの立場で理解し遂行することになる。また、内部統制の整備及び運用状況は、適切に記録及び保存される必要がある。 」

出典:「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」の公表について:金融庁

これをひも解くと3つの大事なポイントが見えてきます。

  • 社内規程によって誰もがわかるような状態になっていること
  • 社内規程を全員が理解して運用されていること
  • 運用状況がきちんと記録され、実態に沿って逐次見直ししていくこと

社内規程を定め運用しても、実際の業務とかけなはれているのであれば、「業務自体を変える」「規程を変える」など逐次見直していく必要があります。

また、内部統制の定義として、以下のように記載されています。

「内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される。 」
出典:「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」の公表について:金融庁

この4つの目的と6つの基本的要素を支える基盤となっているのが、会社の制度やルール作りを定めている「社内規程の整備」と言えます。

IPOまでに必要な規程の種類

次に、IPOまでにどのような規程が必要となるのかを見ていきましょう。

経営の基本となる規程として、取締役について定めた「取締役会規程」、稟議事項の基準や稟議の手続きを定めた「稟議規程」、職務に対する権限について定めた「職務権限規程」、仕事の範囲や責任の所在について定めた「業務分掌規程」があります。

また、人事労務に関する規程として、「就業規則」がありますが、関連する規程も就業規則と一体としてみなされる点は注意が必要です。就業規則の本則で「賃金規程は別の規程に定める」「育児介護休業規程は別の規程に定める」といったように別規程を置いているものもありますが、それらは就業規則と一体的にみなされ、届け出が必要となりますので注意しましょう。

IPOまでの社内規程運用スケジュール

社内規程の整備後には、運用実績の積み上げが必要となります。

その際に、誰がどういう決定をして、規程を作成したかを記録しておきましょう。記録が残っておらず担当者の退職などで経緯がわからなくなるような状態では、組織的な経営の仕組みができているとは言えません。

社内規程整備と運用で押さえておきたい論点

ここまで社内規程の整備と運用の流れについてお話してきましたが、その中で押さえておきたい論点を以下にまとめました。

いくつかの論点について、具体的に見ていきましょう。

「規程間の整合性はとれているか。」

規程間で言葉のずれが発生し、その結果解釈が異なるケースです。例えば、ある規程では「社員」、別の規程では「従業員」を使っていると、定義や解釈にずれが生じてしまいます。各規程を作成する担当が別々の場合、言葉遣いやてにをはの使い方にばらつきがでてしまいますので、注意が必要です。

「規程は各種法令等に違反していないか。」

規程を作る際、ひな型を利用して作っているという方もいらっしゃるかと思います。その際に注意していただきたいのが、現在の法律と照らし合わせて正しいのかどうかです。また、就業規則に関連する法律は常に変わっていますので、法改正後に追従して改定を行わないといつの間にか違法状態となっていることがありますので注意が必要です。

「社員には周知徹底され、必要な規程はいつでも閲覧できるようになっているか。」

規程によっては、周知が効力の発生要件になっているものがありますので注意が必要です。

規程の整理、運用を行っていく上で、横断的に見ることのできる知識のある担当者を配置していくとよいでしょう。

上場後においても求められるガバナンス

また上場後においても、コーポレートガバナンスは重要なテーマとなっています。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2021年に発表した調査では、回答企業のうち71.7%が、ESG活動における主要テーマとして「コーポレートガバナンス」と回答しており、最大のテーマとなっています。このように、社内規程を整え適切な内部統制を実現することの重要性は高まっています。

まとめ

今回は、IPOプロセスにおける内部統制の重要性と社内規程の位置づけについて、見ていきました。社内規程の整備するだけでなく、規程を運用し、見直していくことは、IPOに向けてだけでなく、上場後の企業価値向上にも非常に重要となります。一方、見直しを行わないといつの間にか違法状態になっているということが十分にありえます。社内規程を正しく整備し、運用を行い、リスクを減らしていくようにしましょう。

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