カスハラ対策マニュアルの作成で意識すべき2つのポイントは!?【セミナーレポート】

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佐藤 大樹

株式会社 KiteRaは2024年10月2日に東京でカンファレンス「 KiteRa SQUARE」を開催しました。「社労士が集い 学び 繋がる場所」を目指し、社労士、大学教授、弁護士の3名が登壇しました。

<全体のプログラム>
第一部:社会保険労務士法人名南経営 宮武 貴美 氏
2025年施行の改正育児・介護休業法規程整備に向けて押さえておくポイント

第二部:成蹊大学 法学部 教授 原 昌登 氏
「カスタマーハラスメント防止対策に関する検討部会」の委員が語る!カスハラの最新動向と顧問先を守るための対処法   

第三部:株式会社KiteRa 社外取締役 弁護士 向井 蘭 氏
「より実務的な就業規則を作る上で気をつけるべきポイント」
 ~モデル就業規則とKiteRaの就業規則雛形を徹底比較~

本記事では、成蹊大学 法学部 教授 原 昌登 氏の講演の中から、カスハラ対策の「マニュアル作成」において重要な2つのトピックを紹介します。

人事労務や総務などの担当者として、マニュアル作成の際にご参考になれば幸いです。

録画セミナーの視聴はこちらからお申し込みできます。

※カスハラ対策の基礎的な内容については、下記の記事にまとめています。

合わせてご確認ください。

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カスハラとは?クレームとの違いや具体例と企業がすべき対策を解説

顧客が企業やその従業員に対して行う不当な要求や迷惑行為のことです。カスハラに備えることは、企業にとって喫緊の課題でしょう。人事・労務関連の基礎知識から、社内規程の作成や見直しに関わる法改正の最新情報ま...

【1】判断基準の「具体性」を大切にすること

✖️ クレームが長時間になったら上司を呼んでください
○ クレームが20分続いたら上司を呼んでください

会社がルールやマニュアルを作成する際には、「具体性」を重視することが重要です。

「クレームが長時間になったら上司を呼んでください」や「クレームが長くなったら連絡をください」といった表現では、現場で「長時間とはどれくらいか」を個別に判断しなければならず、ルールとして機能しにくくなります。ルールやマニュアルを定める際には、「クレームが20分続いた」など、具体的な数値を設定し、現場がスムーズに対応できるようにしてください。

具体性を持たせるポイントは、時間に限りません。例えば、商談での対応方針として、金品を要求された時点で対応を中止するなどの基準を設けることも考えられます。

厚生労働省のガイドラインでは、カスタマーハラスメント(カスハラ)の判断基準は業種や企業文化によって異なることがあり得ると記載されています。たとえば、コールセンターのカスハラと、配達や運送の業務におけるカスハラの基準は大きく異なるでしょう。業界や企業ごとに基準が異なるのは自然なことですが、「当社では(この業界では)これくらいは普通」として、認めるべきカスハラを見逃すことがあってはなりません。

【2】カスハラを「類型化」すること

会社がルールやマニュアルを作成する際には、カスハラを「類型化」することで、従業員が理解しやすくなります。

今後の法規制に関する議論のベースになると思われる「女性活躍推進検討会報告書」では、カスハラをいくつかの類型に分類していますが、ここではその内容を私なりに整理し、以下の6つの類型にまとめてみました。

6類型具体的な行動
①本来要求できないことの要求⚫契約内容を著しく超える要求
⚫会社の事業とは関係のない要求(性的なもの、プライバシーに関わるもの等)
⚫商品やサービス等の内容と無関係である不当な損害賠償要求
②身体的な攻撃⚫殴る、蹴る、叩く
⚫ 物を投げつける
⚫ わざとぶつかる
⚫ つばを吐きかける 等
③精神的な攻撃⚫ 「物を壊す」、「殺す」といった発言による脅し
⚫ SNSへの暴露をほのめかした脅し
⚫ インターネット上の投稿(従業員の氏名公開等)
⚫ 人格を否定するような発言
⚫ 土下座の強要
⚫ 盗撮 等
④威圧的な言動⚫ 大声でオペレーターを責める
⚫ 店内で大きな声をあげて周囲を威圧する
⚫ 反社会的な言動 等
⑤継続的な(繰り返される)、執拗な(しつこ)言動⚫ 頻繁なクレーム
⚫ 同じ質問を繰り返し、対応のミスが出たところを責める
⚫ 当初の話からのすり替え、揚げ足取り、執拗な責め立て 等
⑥拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)⚫ 長時間の拘束・居座り・電話 等

「①本来要求できないことの要求」は、女性活躍推進検討会報告書に記載された「根拠のない要求や、商品・サービスに全く関係のない要求」「契約の範囲を大きく超える要求」「対応が極めて困難または不可能な要求」「不当な損害賠償請求」をまとめた内容です。

具体的には、契約内容を超える要求、会社の事業にそもそも関係のない要求、商品やサービスとは無関係な不当な損害賠償請求など、さまざまなケースが含まれます。

「①本来要求できないことの要求」が内容に関するものであるのに対して、「②身体的な攻撃〜⑥拘束的な言動」は、態度や行動に関わるものです。特に「③精神的な攻撃」は重要です。社内でのパワハラ対策とも共通しますが、相手の人格を否定する発言や、土下座を強要する、SNSに悪質な投稿をする行為などのほか、場合によっては盗撮も含まれるでしょう。

「④威圧的な言動」には、大声でオペレーターを攻める、店内で大きな声を上げて威圧することなどが該当します。「⑤継続的・執拗な言動」は、話題をすり替えたり、揚げ足を取るような行為です。そして「⑥拘束的な言動」は、長時間にわたる拘束を特徴としています。

補足:カスハラに関する法制化の最新動向


2024年10月(講演実施)時点では、カスタマーハラスメントに関する措置は、パワハラやセクハラ、マタハラ等のように企業に義務付けられているわけではありません。しかし、パワハラ防止指針の中で、カスハラについても適切に対応できるような枠組みを整えることが望ましい旨の記載があり、企業には対策が推奨されています。

現在の状況は、2019年の法改正によりパワハラ防止措置が企業に義務付けられる以前の状況と似ています。義務化の前からパワハラは社会問題として認識されていましたが、根拠となる法律がなかったため、対策に取り組む企業がある一方で、対応を行わない企業も少なくなかったのです。これは、ほんの数年前の出来事です。

国の動きとしては、厚生労働省が設置した有識者会議(女性活躍推進検討会)が、2024年8月、カスハラ防止措置を企業等の事業主に義務付けることが適当であると明記した報告書(前掲の「女性活躍推進検討会報告書」)をまとめました。これを受けて、今後、労働政策審議会での検討を経て、2025年の国会において、パワハラ防止法の改正が目指される見込みです。

キテラボ編集部より

カスハラ対策マニュアル作成のポイントについて、いかがだったでしょうか。セミナーは主に社労士を対象にしたものでしたが、人事労務担当者や総務担当者にとっても、社内マニュアル作成に役立つ多くのポイントが含まれていたかと思います。関心のある方は、録画セミナーもぜひご確認ください。

録画セミナーのご紹介  
本セミナーでは、まず、原 昌登 氏がカスハラの基本的な概念や対策の必要性を解説しました。その後、法制化の最新動向について、「将来的」に法制化の可能性が高いと考察しつつ、「現時点」でも安全配慮義務を根拠にカスハラ対策をするべきだと述べました。カスハラ対策の具体的なポイントとして、①企業全体がカスハラ問題を認識すること、②マニュアルを作成すること、③相談体制を整備すること、④従業員への研修、⑤カスハラ対策の公表などを紹介しました。最後に「カスハラ対策は、顧客、従業員、企業の全てにとってプラスになる。今こそ、対策に着手すべきである」と結びました。  

録画セミナーの視聴は下記よりお申し込みできます。

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「カスタマーハラスメント防止対策に関する検討部会」の委員が語る!カスハラの最新動向と顧問先を守るための対処法

佐藤 大樹
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