人事評価制度の設計は必要!? 課題やポイントを簡単解説!【設計・基本編】
自社の経営目的を達成するために、欠かすことのできない人事評価制度。しかし、戦略も立てずにやみくもに制度を取り入れても、経営目的の達成は困難です。
本記事では、経営目的を実現するための人事評価制度について、「設計」にフォーカスして、設計の基本編として課題やポイントを解説します。
そもそも人事評価制度とは?
そもそも人事評価制度とは、評価期間における業務成果やプロセスを対象に、企業が定めた評価基準によって社員を評価し、報酬や処遇に反映する仕組みを指します。
人事評価制度の基本を詳しく知りたい方は、「人事評価制度とは?概要や仕組み・種類など知るべき基本を簡単解説」をご参考ください。
人事評価制度設計の必要性3つ
企業は、「人材育成」「事業戦略の実現」「企業文化の醸成」などを目的に人事評価制度を導入しますが、踏むべき手順を経ずに導入すると十分な効果を得ることはできません。場合によっては、人事評価制度に対する不満が生じて、離職者が増える恐れもあります。
ここでは、なぜ人事評価制度の設計が必要かを説明します。
場当たり的に制度を導入しないため
人事評価制度を導入する際、場当たり的に制度を導入してしまうと、本質的な課題を解決することはできません。多角的な現状分析の下、適切な手順を踏むことで、自社の本質的な課題解決が可能な人事評価制度を導入することが可能になります。
人事制度全体を統一したコンセプトで設計するため
人事評価制度は、「採用」「配置」「異動」「能力開発」における人事制度のひとつです。しかし、他の制度とは無関係に、人事評価制度のみを考慮して導入をすると、他の人事制度と方針や戦略が合わず、制度の歪みや不満が生じる恐れがあります。経営戦略の下で設計した人事戦略に基づき、人事制度全体を統一したコンセプトで設計することで、制度の適切な運営が実現できます。
自社の課題に適した制度を設計するため
適切な手順を踏まずに設計した場合、自社の課題をモレなく網羅できない恐れがあります。現状分析を行うなど適切な手順を踏むことで、自社の課題をモレなく抽出することが可能です。
人事評価制度設計で押さえるべき3つの課題
ここでは、人事評価制度設計で押さえるべき課題を紹介します。
評価基準の明確化
評価基準は、評価者が解りやすく明確な評価基準を設定することが重要です。
曖昧な表現や不透明な基準の場合、同じ被評価者であっても、評価者によって評価判断が分かれるなど、不具合が生じる可能性があります。こうした不具合は、人事評価制度への不満につながり、最悪の場合、離職につながる恐れもあるでしょう。
可能な限り定量的な基準を設けるほか、定性的な基準の場合であっても、できるだけ定量的な表現にするなど、明確な評価基準を設定してください。
評価方法の適正化
評価方法が適正でないと、人事評価制度への不満が生じるリスクがあります。
「評価方法が明確化されていない」「プロセスを考慮していない」といった場合、評価者が適正な評価が出来ないほか、被評価者の努力が報われないといった評価方法の不備が考えられます。
評価方法を明確化することで、評価者の運用がばらつくことなく、統一したルールの下で適切に評価することが可能になります。また、「結果/プロセス」の項目は、それぞれ項目化することで、プロセスをも評価するよう仕組み化することが可能です。
評価の透明性
人事評価制度への不満を防止するには、評価の透明性を高めることが求められます。
「評価基準がオープンになっていない」「評価のフィードバックがない」といったケースでは、被評価者はなぜ自身がこのような評価になったか解らず、人事評価制度への不満につながる恐れが生じます。「評価基準のオープン化」や「評価結果のフィードバック」によって、公平性や納得感を重視し、人事評価制度の透明性を高めるように設計することも重要です。
人事評価制度の設計を成功に導くポイント3つ
最後に、人事評価制度を成功に導くポイントを解説します。
課題を明確化する
一つ目は、課題を明確化することです。
自社の経営戦略を実現するために、人事の側面でどのような人事戦略を講じるべきかの課題を明確化することで、あるべき方向に向かうことが可能です。この課題を明確化していないと、本来あるべき方向に制度を導くことができず、手段が目的化する事態に陥ることが考えられます。
自社のあるべき姿を実現するため、業界や競合他社の外部環境を踏まえ、自社における「強み・弱み・機会・脅威」を分析し、本質的な課題を抽出することが重要です。「SWOT分析」といったフレームワークを活用することで、現状分析を効果的に行うことができます。
人事戦略を立てる
二つ目は、人事戦略を立てることです。
人事戦略を立てることで、戦略実現に向けた計画が明らかになり、PDCAサイクルを回すことが可能になります。具体的には、人事戦略に基づき人事評価制度の導入・運用に向けた中長期目標を策定します。それを実現するために、年度の短期目標を設定し、年度毎に「計画・実行・評価・改善」のPDCAサイクルを回すことで、自社のあるべき姿に向けた人事評価制度を実現することができます。
いきなりすべてを実現するのではなく、段階を踏むようにステップを分けてPDCAサイクルを回していくことが成功のポイントです。
戦略にあった制度を選ぶ
三つ目は、戦略にあった制度を選ぶことです。
人事評価制度は、多くの企業がMBO(Management by Objectives:目標管理制度)を導入しています。この制度は、チームや個人が設定した目標を管理し、年度毎に成果を評価する制度です。
しかし近年、「OKR(Objectives and Key Results)」「360度評価」「コンピテンシー評価」など人事評価制度は多様化しており、欧米では評価をランク付けしない「ノーレイティング」などの手法も注目されています。自社の課題を解決させるためには、どのような人事評価制度の手法とすべきかを十分に考慮し、自社の戦略にあった制度を導入することが重要です。また、自社の体制で無理のない運営ができる制度を選定することも留意が必要です。
「OKR」「360度評価」「コンピテンシー評価」など各種人事評価制度の概要を知りたい方は、「人事評価制度とは?概要や仕組み・種類など知るべき基本を簡単解説」の記事をご参考ください。
まとめ
本記事では、経営目的を実現するための人事評価制度について、「設計」にフォーカスして課題やポイントを解説しました。
人事評価制度導入を成功させるには、やみくもに制度を導入するのではなく、自社の課題をモレなく抽出し、経営戦略に連動した人事戦略の下、人事評価制度を設計することが重要です。経営目的を達成するために、本記事を参考に、人事評価制度設計の基本を理解し、人事評価制度導入を成功させましょう。