人事評価制度を見直すには!?目的や課題、手法を解説!【見直し編】

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KiteLab 編集部

多くの企業が取り入れている人事評価制度。長年運用していると、制度への不満や不具合が出るものですが、どのように見直すべきか悩まれる人事担当者もいるでしょう。

本記事では人事評価制度への不満やリスクのほか、人事評価制度のメリット・ポイント、見直し時に検討したいトレンドを解説します。

人事評価制度のよくある不満

人事評価制度への不満原因は、大半の企業で共通した理由があります。人事評価制度に関する意識調査によると、人事評価制度に不満を感じる主な要因は次のとおりです。

  • 評価基準が不明確(62.8%)
  • 評価者によって評価にばらつきが出て不公平(45.2%)
  • 評価のフィードバック・説明が不十分(28.1%)
  • 自己評価よりも低くされ、その理由がわからない(22.9%)
  • 評価結果が昇進、昇格に結びつくものではない(21.4%)

中でも、評価基準の明確化や評価結果のばらつきの不満が大きく、見直しで対処すべきポイントであることがわかります。

(参考・引用)Adecco Group:「「人事評価制度」に関する意識調査

人事が知るべき制度への不満放置リスク

人事評価制度の見直しや改定は、労使交渉から制度設計・運用まで、人事にとって多大な手間がかかるもの。しかし、制度への不満を放置すると重大なリスクに発展する恐れがあります。

ここでは、人事評価制度への不満を放置するリスクを解説します。

不服申し立てや訴訟リスク

たとえ評価結果が妥当であったとしても、その結果へのフィードバックが十分でない場合、被評価者からの不服申し立てリスクがあります。

この場合、評価者と被評価者双方から十分にヒアリングを実施し、弁護士や第三者機関からの意見の下で公平な調査の下、解決することが重要です。社内解決できない場合は、各都道府県労働局の個別労働紛争解決制度を利用することが有効です。

これでも和解できなければ、訴訟に発展するリスクもあります。

退職リスクを伴う評価への不満

人事評価制度への不満は、理由によっては、いくら努力しても報われないといったことから、退職につながるリスクがあります。

  • 評価結果への納得感が低く、正当に評価されていないと感じる
  • 評価結果が処遇に反映されていない
  • 評価結果が属人的

こうした「評価基準が不明確」「評価者訓練が不十分」といった場合、不当に評価が低くなるなど退職リスクが高まる恐れがあるため、早急に制度の改善を行う必要があります。

人事評価制度見直し3大メリット

ここでは、人事評価制度を見直すメリットを解説します。

経営戦略に適合した制度運用ができる

人事評価制度は、本来、自社の経営戦略の下、策定された人事戦略に基づいて設計するものです。しかし、長い間、人事評価制度を運用してると、現在の経営戦略に合わなくなることがあります。

自社の環境を踏まえ、人事評価制度を定期的に見直すことで、経営戦略に適合した制度運用が可能になります。

業績などの成果が上がる

人事評価制度の見直しにより不満を解消することで、業績向上が期待できます。

「努力しても報われない」といった不具合を解消し、意欲や成果が高い社員を適正に処遇することで、業績向上に繋げることが可能です。経営計画を目標設定に連動させるなど、目標管理制度の仕組みを見直すことも有効でしょう。

自社の価値観に合った人材を育成できる

人事評価の評価項目を見直すことで、自社の価値観に合った人材の育成が可能になります。

具体的には、自社の求める人材像を行動特性や価値観を言葉に落とし込み、評価項目に取り入れます。これにより、価値観の理解浸透や行動を社員に促すことができます。

人事評価制度見直し3つのポイント

次に、人事評価制度の見直しに欠かせない3つのポイントを解説します。

見直し必須!?評価基準の3要素

人事評価制度における評価基準は、「成果評価」「能力評価」「情意評価」の3つ要素で構成されています。それぞれの見直しポイントを見てみましょう。

成果評価の見直しポイント

成果評価の評価基準には、売り上げなど定量的な評価が可能な「定量評価」、課題達成など定性的な評価をすべき「定性評価」があります。この評価基準が適した職種や部門に適用されていない場合、適切な成果評価ができないリスクが生じます。

たとえば、営業部門には定量評価の比重を上げる、事務部門には定性評価の比重を上げることが必要です。また、定量評価の評価基準については、定め方に工夫が求められます。「何を」「いつまでに」「どのように」を明確にし、すべて100%達成で「B」、100%を上回る評価であれば「A」、100%を下回る評価であれば「C」など、曖昧な評価にならないよう基準を作りましょう。

能力評価の見直しポイント

能力評価の評価基準には、スキルや知識など業務に直結する能力のほか、改善力、業務遂行能力、企画力など、どの職務にも共通する職業能力があります。

これらの能力評価基準は、年数や階層に応じた能力要件に見合っていない場合、社員のパフォーマンスを発揮できない恐れが生じます。自社における人材育成方針の下、階層や年数に適した能力要件を定め、それぞれに適した能力評価基準を定めましょう。

情意評価の見直しポイント

情意評価の評価基準には、業務プロセスや仕事に対する姿勢、行動特性などがあります。

若年層は、経験年数が浅いことから、成果評価よりも情意評価に比重を上げることが基本です。他方、新規事業の立ち上げなど、リスクを取る戦略を推進する必要がある場合は、「業務プロセスなどの「情意評価の引き上げ」「中長期目標の重点化」を行うことが有効でしょう。

行うべき評価者訓練

評価結果のばらつきを防ぐために、欠かすことはできない評価者訓練。

評価者を対象に、自社の人事評価制度の仕組みや評価基準、評価方法などの理解を浸透させるとともに、人事評価エラーを防ぐための人事評価の訓練を実施します。

これらの訓練を実施するよう運用を見直すことで、人事評価制度への不満を防止することが可能です。とくに、評価方法が属人的にならないよう、人事評価の手引きといったマニュアルを作成することも有効でしょう。

不可欠な評価フィードバック

フィードバックを適切に実施することで、評価結果の納得性を高めることが可能です。

なぜ、今回の評価に至ったのか、評価基準と評価結果を照らし合わせて、フィードバックしてください。自己評価と評価結果の乖離を説明できると、なお良いでしょう。

見直し時に検討したい人事評価制度のトレンド

多くの企業は、MBO(Management by Objectives:目標管理制度)を導入していますが、このMBOが自社の目的に合っているかを検討することも必要でしょう。

近年、時代の要請や変化に合わせて、「360度評価」「OKR(Objectives and Key Results)」「コンピテンシー評価」など、新たな人事評価制度を取り入れている企業が増えています。欧米では、人事評価をランク付けしない「ノーレイティング」といった手法も注目されています。

必要に応じて、自社の課題に適した制度を検討するとともに、自社の体制で無理のない運営ができる制度を選定することも留意が必要です。

ここでは、主な人事評価制度の概要を説明しますので、参考にしてください。

MBO

MBO(Management by Objectives)は、日本で最も普及している目標管理制度。期初に設定した目標に対し、成果やプロセスを評価する目標管理手法です。

 OKR

OKR(Objectives and Key Results)は、MBOと同様、目標管理制度のひとつ。企業の目標を高次元で実現するために適用される目標管理制度です。

 360度評価

360度評価とは、上司や部下、同僚など多くの視点で関係者が評価する多面評価制度です

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価とは、高業績をあげる社員のコンピテンシー(行動特性)を指標とする評価制度です。

「OKR」「360度評価」「コンピテンシー評価」など各種人事評価制度の概要を知りたい方は、「人事評価制度とは?概要や仕組み・種類など知るべき基本を簡単解説」の記事をご参考ください。

まとめ

本記事では人事評価制度への不満やリスクのほか、人事評価制度のメリット・ポイント、見直し時に検討したいトレンドを解説しました。

人事評価制度の見直しは、評価基準の不明確さや評価のばらつきを是正するため、「評価基準の見直し」「評価者訓練の実施」「評価フィードバック」を行うことが重要です。

本記事を参考に、人事評価制度への不満を解消するよう、人事評価制度を見直しましょう。

KiteLab 編集部
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