ハローワーク求人票の効果的な書き方を解説!給付制限期間中の求職者を意識していますか?【後編】

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松本 幸一

ハローワーク職員の経歴を持つ社会保険労務士の松本 幸一です。

今回のテーマは、ハローワーク求人票の効果的な書き方を解説します。

こんな経験はありませんか?

・求人を掲載したにもかかわらずなかなか応募が来ない
・応募はあるものの、求める人物像にマッチする求職者からの応募が来ない

本記事では、ハローワーク時代に紹介窓口業務にも従事していた経験をもとに、求職者からの応募が集中する、もしくは定期的な紹介希望がある求人に共通する点をわかりやすく解説します。

ハローワーク求人の就職件数や紹介件数は減少傾向

就職件数、紹介件数、求職者数、求人数などについて厚生労働省がまとめた統計によると(参考1)、ハローワークにおける就職件数、紹介件数は減少傾向にあります。

背景については、次のような理由が考えられます。

・特に製造、販売業務での自動化等設備投資による労働力不足の補完
・採用活動への投資として民間人材紹介会社利用へのシフト
・自動化が難しい業務に求められるスキル・経験と求職者のそれとのマッチングがより困難化
・特に若年層のハローワーク利用率の低下

(参考1)一般職業紹介状況(職業安定業務統計):雇用関係指標(年度)
(参考2)リクルートワークス研究所

これら就職件数・紹介件数が減少している背景のうち、民間人材紹介会社・求人媒体においても共通する部分は少なからずある、と私は考えています。

そんな中、ハローワーク求人掲載をどう捉えるかは採用活動に対する費用感次第ではないでしょうか。

就職件数・紹介件数ともに減少傾向があるものの、無料で求人を掲載できるハローワークに確かに求職者がいると捉えるか、共に減少がはっきりしているハローワークを避けて採用活動への投資を強化するか、このいずれによるかで求人者にとってのハローワーク求人掲載は価値が決まるでしょう。

いずれにしてもハローワーク求人掲載に利用価値が見いだせる可能性がある以上、会社の採用戦略の大局からハローワーク求人掲載について検討をする際の一助となれば幸いです。

ハローワーク求人票の効果的な書き方

ハローワーク求人票を書くコツの大前提として重要なのは、
「給付制限期間中の求職者を意識して記載すること」です。

ターゲットとなる給付制限期間中の求職者とは、どんな特徴があるのか。
以下、詳しくお伝えします。

給付制限期間中の求職者とは

給付制限期間中の求職者は、最も注目すべきハローワーク特有のターゲットです。

細かい解説は割愛しますが、いわゆる失業保険を受給中の求職者が再就職した場合、失業保険の受給はそこでストップします。

ただし、失業保険の手続き後、受給がスタートする前、もしくは失業保険の受給中に早期再就職した場合に、まだ受給していない失業保険の最大70%にあたる額を再就職後に申請できる「再就職手当」という制度があります。

再就職手当の受給にはいくつか要件がありますが、そのうちのひとつに

受給資格に係る離職理由により給付制限(基本手当が支給されない期間がある場合)がある方は、給付制限期間のうち最初1カ月間の就職はハローワーク又は職業紹介事業者の紹介による就職であること

というものがあります。

(参考)https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/saishuushokuteate.pdf

給付制限期間とは、自己都合もしくは懲戒解雇で退職した場合に設けられる、簡単に言うとおあずけ期間のようなものです。

(参考)再就職手当のご案内|厚生労働省

給付制限期間の1カ月が経過した後はハローワーク等の紹介による就職のみでなく、求人媒体や知人の紹介等による就職であってもその他の要件を満たせば再就職手当の申請が可能になります。

そのため、失業保険受給の手続き当日から求人紹介を受けられるハローワーク窓口には、早期再就職を希望し、かつ再就職手当の受給を希望し、1日でも早くハローワーク求人の選定、応募に向けて活動を開始したい求職者が一定数訪れます。

ハローワーク求人票 書き方のポイント

1日でも早く就職したい求職者を意識して、情報量は明確に、豊富に、求職者が迷わないように記載することが大切です。

ここからはハローワーク求人票について、紹介窓口から求人者へ問い合わせることが多かった内容を中心に、より多くの求職者の目に留まる求人票の書き方をお伝えしていきます。

(参考)求人申込書|ハローワークインターネットサービス

ポイント1 仕事内容は具体的に記載する

仕事内容が全く同じだとすると、どちらの求人により興味が湧くでしょうか?

求人票A

職種人事
仕事内容人事をお任せします。

求人票B

職種人事(中途採用担当)
仕事内容中途採用業務全般をお任せします。・中途採用計画案の作成、応募データ等の集計、分析(他部署からのヒアリング、フィードバックを含む)・求人媒体社のページ原稿作成、連絡窓口・紹介会社担当者との連絡窓口・応募者対応、面接日時設定・採用後、入社までのフォロー含めた連絡、調整・上記の他中途採用において発生する諸業務全般
新卒採用、研修、入退社手続き・給与計算はそれぞれ別の担当者がいますので中途採用業務に集中して取り組んでいただけます。また、実績に応じて採用時の担当から人事部内の他業務へのステップアップも可能です。

もちろんBですよね。

人事と言っても幅広く、採用・教育・給与計算・労務等様々な業務があります。
求人票Aでは人事のうちどの業務の担当なのか、複数担当するのか、すべて担当するのかまったく分かりません。その分うっすら目に留まる数は多いかも知れませんが、その全員が詳細を知るため窓口へ持参するとは到底考えられません。

一方求人票Bでは仕事の内容が詳細に記載されていますので、採用担当を希望する求職者には必中で目に留まるでしょう。

もちろんその他給与、勤務地等の諸条件はありますが、その部分は一定条件を指定して検索している場合もあるため、一定程度本人の希望を満たしていると想定するとそこで目に留まれば応募に至る見込は非常に高いです。なお、仕事の内容欄は最大で360文字まで表示可能ですので、まずは全部使い切るぐらいの勢いで書いてみてましょう。文字数が超過した場合は、ここでは一旦削りつつ、後で解説する「求人に関する特記事項」欄に書くことをおすすめします。

また、この後にお伝えする他の項目でも同様ですが、求人票Aのような記載からは「雑な会社」「極端に求人者目線である」といったネガティブな印象を抱かれかねません。

求人票は商品ではないものの、求人活動本来の役割に加え「会社のブランディング」に貢献するツールでもあるため、自社のイメージを下げるような記載は避け、会社ブランドの向上も常に意識することが大切です。

ポイント2 必要な経験やPCスキルは具体的に記載する

特に中途採用にあたっては即戦力を求められることが多く、求職者に求める経験等もより具体的なものであるはずです。

それにもかかわらず、ハローワーク求人票で散見されるのがこちらです。

△な例

必要な経験等採用経験のある方
必要なPCスキルワード、エクセル(数式)が使える方

少し手直ししてみます。

必要な経験等採用経験のある方※特に〇〇(求人媒体やエージェント)の利用経験者は優遇します
必要なPCスキルワード、エクセルが使える方※Chatwork、インデントでの行頭調整、vlookup関数、index関数、データ集計機能を日常的に使用します

業務で利用するサービスやシステム、ソフト等あれば具体的に記載しましょう。

PCスキルについても、スペースに限りがあるため全ての機能を列挙するのは難しいですが、具体的な数式がひとつあるだけで、自身のスキルとの比較がぐっと易しくなります。

実際に窓口では、特にエクセルについて、△な例のような記載ゆえ、出来上がったフォーマットに入力するだけでいいのか、関数はどの程度必要か、マクロまで求められるか確認してほしい、という相談が非常に多くありました。

この場合、窓口から求人者に問い合わせを行いますが、求人票を作成した担当者が把握できていなければ即答出来ず追って連絡します、となることも多いです。

ところが、先に解説した早期再就職を希望する給付制限期間中の求職者の場合、採否確定までの日数が短い求人を希望する傾向が多く、応募を見送られてしまいかねません。

求めるスキル等をもつ求職者の目に留まったにもかかわらず、求人票に記載する内容の詰めが甘く逃してしまうのは非常にもったいないことなので、特にPCスキルについてはスペースの許す限り、よく使う機能や関数等を記載しておくと応募の確率がぐっと高まります。

ポイント3  パートの場合は就業時間の相談可否について記載する

全てのシフトパターンを書くのは難しくとも、対応できる範囲で相談に応じることを明記します。

・特に入ってもらいたい時間帯、曜日

・最低週〇日、1日〇時間~から相談可能

・学校行事等は優先して休んでもらえるようスタッフ間で協力しています など

パートを希望する方の就業日数、就業時間の希望は想像以上に多岐にわたります。

そのため、最低限働いてもらいたい日数、時間帯、時間数は必須の記入項目です。

ポイント4 事業所の画像欄にHP、SNSアカウントのQRコードを表示させる

実はハローワーク求人には求人には最大10枚の写真を掲載することが出来ます。

写真は求人票には表示されませんが、ハローワーク内の求人検索パソコン、もしくはハローワークインターネットサービス上で見ることができるようになっています。

そこでおすすめしたいのが、この写真スペースへのホームページやSNSアカウントのQRコードの掲載です。

会社の広報活動としてホームページやSNSを活用しているのであればそれを見てもらえる導線づくりが大切です。

求人票にホームページアドレス欄がありますが、SNSアカウントを記載するには次に解説する求人に関する特記事項欄しかありません。

もちろん紙面での記載もいいのですが、QRコードがあるとよりアクセス率が挙がることが見込めます。

また、オフィスの写真など数枚ピックアップして掲載する従来のやり方ももちろん良いのですが、会社がホームページやSNSに力を入れているのであればこれを活用するのが手っ取り早いです。

ポイント5 求人に関する特記事項欄をフリーアピール欄として記載する

特記事項という項目名も影響しているのか、備考欄のようなイメージで空白のままの求人票が多かったと記憶しています。

一方、応募希望者の多い求人は、この特記事項欄に

「代表からのメッセージ」「求人している部署の紹介」「求める人物像」などアピールの場として活用している傾向があると思います。

実はこの特記事項欄は600文字でハローワーク求人票の中で最も文字数が多い項目で次に多い仕事内容の360文字に比べより多くの記載が可能ですので、これを活用しない手はありません。

社会保険労務士の松本 幸一のワンポイント
ハローワーク求人票に限った話ではありませんが、ひとつホットな話題として、「退職代行の使用禁止の記載」についてお話しします。
先に結論をお伝えすると、求人票に退職代行の使用禁止を記載することは、私の考えとしてはおすすめできません。

私がこのように考えるのは、上記求人票に記載したところで実際に退職代行を使われた場合に、対抗する術がないからです。求人票へ記載したことを根拠に退職を認めず、最終給与を支給しない、離職票を発行しない等の不利益な行為に対して訴訟に発展した場合、まず間違いなく会社が負けるでしょう。

このような不当な制限を求人票に明記する会社に応募したくなるでしょうか?それどころか、先の解説でも触れた会社ブランドを自ら下げに行くことに他なりません。

これからの考え方から、私個人としては求人票へ退職代行の使用禁止を記載することはおすすめしません。現状ハローワーク求人票への記載の良否についても明確な回答が出ていませんので、記載にあたってハローワークでの個別の判断になる可能性があります。その上で記載を進めるにあたっては、その後会社に与える影響を重々理解した上で行っていただければと思います。

記載方法・選考についてよくある質問5選

Q1 正社員でハローワーク求人を掲載しましたが、契約社員で採用してもいいですか?

A 望ましくはありませんが、選考時に本人の同意があれば契約社員での採用も可能です。

例えば本人のスキルに不安が残る等理由があって雇用形態その他労働条件が変更となること自体は問題ありません。ただし、毎回求人内容と採用条件が異なることが続くと紹介窓口担当者の心証に少なからず影響を与え、貴社の求人を積極的に求職者へおすすめしてもらえなくなる可能性があります。求人票の記載内容は随時実態に即して見直すことをおすすめします。

Q2 ハローワークを通さず直接電話を掛けてきた人も選考をしないといけませんか?

A 選考するかしないかは会社の判断にお任せします。

ただし、ハローワークを通さない応募で採用に至った場合は先に解説した再就職手当、また前編で解説した特定求職者雇用開発助成金の対象外となりますので、その点に不安が残る場合は改めてハローワークの紹介窓口にて応募するようご案内いただければ結構です。

Q3 従業員の数が変わる度に事業者登録シートの内容を変更しないといけませんか?

A 毎回必須ではありませんが、会社・事業場の規模・人数構成と大きく乖離しない範囲で定期的な変更をおすすめします。

就業場所の人数構成はどれぐらいの人数規模なのか、男女、パートの割合など応募を決める要素のひとつになる求職者もいますので、定期的な変更が望ましいです。

Q    男性(女性)ばかりの職場なので男性(女性)のみ募集をしたいのですが・・・

A ハローワークで求人可能な職業については男女の限定はできません。

男女雇用機会均等法により、ごく一部(性別を特定したモデル、利用者が利用する時間帯の浴室や更衣室の巡回等)以外では、性別を指定することは認められていません。

Q5    役職のポジションの都合上、40代に限って募集をしてもいいですか?

A 特定の年代に限った募集は出来ません。

ただし、以下を理由とする上限年齢の設定に限っては例外として認められています。(一部抜粋)

・定年
・長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等(35歳未満を想定)を期間の定めがない労働契約の対象として募集・採用する場合 など。

松本 幸一
さいわい人事労務事務所 社会保険労務士
TOP実務の手引き

ハローワーク求人票の効果的な書き方を解説!給付制限期間中の求職者を意識していますか?【後編】