2024年度に注目すべき助成金5選!岡佳伸氏が解説

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岡佳伸

特定社会保険労務士の岡佳伸(岡佳伸事務所)です。

今回のテーマは「助成金」です。

厚生労働省の助成金には、採用や育児、働き方、賃上げなどについて、様々な制度があります。「年収の壁」対策や「育児や介護の両立支援の問題」「不安定雇用」を解消する目的で導入された助成金もあり、うまく活用することで企業が抱える課題を解決することもできます。一方で、「申請の手続きが大変」「情報収集する時間がない」という人事労務担当者の方も多いのではないでしょうか。

今回は、私が2024年度(令和6年度)に注目すべき助成金を5個に絞り、解説します。

【1】キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)

助成金の概要

「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」は、厚生労働省が2023年10月から開始した制度で、短時間労働者が社会保険に加入することで手取り収入が減少することを防ぐ目的があります。

この制度は、事業主が労働者の収入を増やす取り組みを行った場合、労働者1人あたり最大50万円を助成します。社会保険適用促進手当等を支給して社会保険に加入する手当等支給メニューと労働時間を延長の上、時間数によっては賃上げを行う労働時間延長メニューと2つを組み合わせる併用メニューがあります。2026年3月31日までの暫定措置になります。

主な支給条件と金額

(1) 手当等支給メニュー

・1年目、2年目の取組としては、労働者負担分の社会保険料相当額(標準報酬月額等の15%以上)の手当支給又は賃上げを行い社会保険の被保険者となること。

・3年目の取組としては、基本給の総支給額の18%以上増額を行うこと。(賃上げ等、労働時間延長あるいはその両方による増額)

企業規模① 1 年 目 の 取 組② 2 年 目 の 取 組③ 3 年 目 の 取 組
中 小 企 業4 0 万円( 1 0 万円× 4 期)1 0 万円

大 企 業
3 0 万円( 7 . 5 万円× 4 期)7. 5 万円

(2) 労働時間延長メニュー

新たに社会保険の被保険者となった際に、週の所定労働時間を4時間以上延長する等を行った場合、または、週の所定労働時間を1時間以上延長する上に賃金引上げを実施し、これにより対象者が社会保険の被保険者となったとき。

延長時間
賃金引き上げ率
4 時 間 以 上3 時 間 以 上 4 時 間 未 満2 時 間 以 上 3 時 間 未 満1 時 間 以 上 2 時 間 未 満
5 % 以上1 0 % 以上1 5 % 以上
中 小 企 業3 0 万円

大 企 業
2 2. 5 万円

併用メニュー

社会保険加入後、1年目に手当等支給メニュー①の取組を行い、2年目に労働時間延長メニューの取組を行った場合も、それぞれの額が支給されます。併用メニューによる活用方法を除き、同一の対象者について2つ以上のメニューを受給することはできません。

申請手続きのポイント

(1)手当等支給メニューは社会保険適用促進手当等を支給して106万円の壁を突破して社会保険を適用した場合に支給になります。よって、想定は社会保険の特定適用拡大事業主(現在101名以上、2024年10月以降は51名以上)になります。想定以外の事業主は任意適用拡大事業主になった場合などに活用できます。

(2)現在、社会保険の特定適用拡大事業主(現在101名以上、2024年10月以降は51名以上)で週20時間以上働いている首都圏や都市圏の労働者は、最低賃金の兼合いから既に月額8.8万円を超えて社会保険を適用されていると考えられます。よって、首都圏や都市圏の労働者が手当等支給メニューを活用して社会保険適用させることは考えにくいです。考え方を下記に記載します。

現在の社会保険適用拡大事業主(現在101名、2024年10月から51名以上)の場合
・週所定労働時間20時間以上(月当たり約87時間)
・月収8.8万円未満

上記の人を「社会保険促進適用手当」を使って月収8.8万円以上にするのが目的です。ということは現在の時給が1011円以下の人が対象になると考えられます。現行の最低賃金で1,012円以上の都道府県は首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)、愛知、大阪になります。よって、対象外(所定労働時間週20時間以上かつ月収8.8万円未満の人が居ない)ということになります。社会保険適用拡大事業主以外の事業主が4分の3基準以上に働くのを支援するために使うことは、標準報酬月額の上限が10.4万円迄なので考えにくいです。

(3)労働時間延長メニューは社会保険に加入されるために労働時間を延長して4分の3基準(通常30時間と想定されます)を超える場合の適用が想定されています。

(4)労働時間延長メニューの活用としては、家庭の事情で週20時間未満でしか働けなかった労働者が、正社員よりは短いものの所定労働時間週30時間以上で働けるようになった場合に活用することが考えられます。その後、正社員で働けるようになった場合はキャリアアップ助成金正社員化コースを活用する流れです。

(5)労働時間延長メニューの賃金の上昇率を計算する場合、最低賃金が上がったことに上がったとしても問題ありません。(最低賃金の上昇率を差し引いて考え審査することはありません)

スケジュール

1.キャリアアップ計画書を作成し、管轄の都道府県労働局長に提出します。キャリアアップ計画書は、適用メニューに丸をつけた後で、社会保険適用時処遇改善コース取組内容(手当等支給や労働時間延長、又は併用メニュー等)をチェックボックスで選択します。複数の取組を通常行うと考えられるので全てのメニューに丸及びチェックボックスを選択してください。実施予定日も記載します。キャリアアップ゚計画書は取組日の前日までに提出が必要です。

2.社会保険に加入した労働者に対して、メニューに応じた取り組みを実施します。「手当等支給メニュー」では、「社会保険適用促進手当」や「賃金の増額」などで労働者の収入を増加させます。「労働時間延長メニュー」では、「所定労働時間の延長」や「賃金の増額」などで労働者の収入を増加させます。

3.取り組みを実施し6か月間経過後、支給申請書と添付書類を事業所の所在地を所管する都道府県労働局に提出します。

オススメする企業

労働力不足に悩む企業で、現在、社会保険適用していない対象労働者の労働時間を延長して活躍して貰おうとする企業に最適な助成金です。対象労働者は所定労働時間の増加や賃上げにより手取りを減らさずに社会保険に加入でき厚生年金や健康保険等の手厚い保障が受けられます。企業は社会保険に加入による人件費の増加の一部を助成金で賄うことが出来ます。

(参考)厚生労働省:キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)

【2】キャリアアップ助成金(正社員化コース)

助成金の概要

「キャリアアップ助成金」は、正社員以外の非正規雇用労働者の企業内での処遇改善を促進するための制度です。正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成されます。「正社員化コース」とは、正社員以外で雇用されている者を正社員に登用することで、不安定雇用を解消することを目的としています。

制度創設当初から多くの申請がありましたが、非正規と正社員との処遇に差が無い時や、正社員と言っても昇給や賞与、退職金がないなど、良質な雇用とは言えない状況が見られました。また、正社員として採用された人を非正規と偽るなどの不正受給も散見されました。そのため、審査が厳格化され、2022年10月から要件が大幅に改正されました。

 助成金金額

正社員化前雇用形態
企業規模
有 期 雇 用 労 働 者無 期 雇 用 労 働 者
中 小 企 業8 0 万円( 4 0 万円× 2 期)4 0 万円( 2 0 万円× 2 期)
大 企 業6 0 万円( 3 0 万円× 2 期)3 0 万円( 1 5 万円× 2 期)

 加算額

措置内容有 期 雇 用労 働 者無 期 雇 用労 働 者
派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用する場合2 8 万5 ,0 0 0 円2 8 万5 ,0 0 0 円
対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合9 5 ,0 0 0 円4 7 ,5 0 0 円
人材開発支援助成金の訓練修了後に正社員化した場合
(自発的職業能力開発訓練または定額制訓練以外の訓練修了後)
9 5 ,0 0 0 円4 7 ,5 0 0 円
人材開発支援助成金の訓練修了後に正社員化した場合
( 自発的職業能力開発訓練または定額制訓練修了後)
1 1 万円5 5 ,0 0 0 円
正社員転換制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合(1事業所当たり1回のみ)2 0 万円
(大企業 1 5 万円)
2 0 万円
( 大企業 1 5 万円)
多様な正社員制度(※)を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合(1事業所当たり1回のみ)
※  勤務地限定・職務限定・短時間正社員いずれか1つ以上の制度
4 0 万円
( 大企業 3 0 万円)
4 0 万円
( 大企業 3 0 万円)

主な支給条件

取組の前にキャリアアップ計画の届出が必要になります。原則6か月以上勤務している非正規社員を就業規則等で決められた方法で面接試験等を行い、6か月間雇用が定着した後に1期目の支給申請することができます。その後6か月間継続雇用した後に2期目の申請を行います。

正社員転換後6か月間の賃金を転換前6か月間の賃金より固定的な賃金で3%以上増額させる必要があります。また、転換前後の6か月間で会社都合退職者等(喪失原因3)の人がいないことの要件があります。

申請手続きのポイント

2022年10月以降の厳格された要件のポイントは下記になります。

・正社員要件の厳格化: 正社員は「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限られます。適用されるには就業規則や賃金規定等で明記されている必要があります。昇給額や賞与額には規定はありませんが、「社会通念上妥当とされる金額」でなければなりません。また、正社員化後に試用期間を設けている場合、その期間は正社員とされません。

・非正規と正社員との区分: 転換対象となる非正規については、賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を原則6か月以上受けて雇用している必要があります。基本給の多寡や昇給幅の違い、賞与、諸手当の有り無し、額の違いなどが適用される必要があります。

・有期雇用契約要件の厳格化: 雇用区分の就業規則において契約期間に係る規定がない場合、転換前の雇用形態を無期雇用労働者として扱われます。

・正社員要件の厳格化: 正社員は「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限られます。適用させるには就業規則や賃金規定等で明記されている必要があります。昇給額や賞与額には規定はありませんが、「社会通念上妥当とされる金額」でなければなりません。また、正社員化後に試用期間を設けている場合、その期間は正社員とされません。

・非正規と正社員との区分: 転換対象となる非正規については、賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を原則6か月以上受けて雇用している必要があります。基本給の多寡や昇給幅の違い、賞与、諸手当の有り無し、額の違いなどが適用される必要があります。

・有期雇用契約要件の厳格化: 雇用区分の就業規則において契約期間に係る規定がない場合、転換前の雇用形態を無期雇用労働者として扱われます。

スケジュール

事前にキャリアアップ計画を労働局に届出を行います。原則6か月以上勤務している非正規社員を就業規則等で決められた方法で面接試験等を行い、6か月間雇用が定着した後に1期目の支給申請を2カ月以内に行います。その後6か月間継続雇用した後に2期目の申請を6カ月経過後の2カ月以内に行います。

オススメする企業

キャリアアップ助成金正社員化コースの活用方法については、当初の有期契約の期間で見極めを行い、正社員登用を図ることで、慎重な採用とその後の定着という流れを作ることができます。採用された労働者にとっても契約期間満了として円満に離職することができます。また、採用時に他の助成金と違い就職経路は問われません。知人の紹介であっても非正規社員として採用するのであれば、活用できます。

(参考)厚生労働省:キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)

【3】早期再就職支援等助成金雇入れ支援コース

助成金の概要

早期再就職支援等助成金は、再就職支援コース、雇入れ支援コース、中途採用拡大コースの3つのコースが設けられています。雇入れ支援コースでは、再就職援助計画や求職活動支援書の対象者、または雇用保険の特定受給資格者を、離職日の翌日から3か月以内に、一般被保険者または高年齢被保険者 かつ期間の定めのない労働契約を締結する労働者として雇い入れ、雇入れ前の賃金と比較して5%以上、上昇させた場合や、その雇い入れた方に対して職業訓練を実施した事業主に対して助成が行われます。これは、離職を余儀なくされる方の早期再就職及び定着の支援を目的としています。

(1)通常助成(2)優遇助成
30万円40万円

ただし、(1)、(2)のどちらの助成区分も1年度1事業所当たり500人分を上限とします。

また、支給対象者が雇い入れた日から支給基準日までの間において行った労働に対する賃金(臨時に支払われる賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く)の額がそれぞれの支給対象者に係る支給申請額に満たない場合は、当該賃金の額を支給します。

(1)通常助成

支給対象者1人につき30万円が支給されます。

(2)優遇助成

一定の成長性が認められる事業所の事業主が、地域経済活性化支援機構(REVIC)の再生支援等、一定の要件を満たした事業所等から離職した方を雇い入れた場合、支給対象者1人につき40万円が支給されます。

〇人材育成支援

支給対象者に支給対象訓練を実施した場合は、以下の額を追加で支給します。

助成対象通常助成優遇助成
(1)Off-JT実施助成960円(480円)/時間1,060円(580円)/時間
経費助成(実費相当上限)10 時間以上100 時間未満15万円(10万円)25万円(20万円)
100 時間以上200 時間未満30万円(20万円)40万円(30万円)
200 時間以上50万円(30万円)60万円(40万円)
(2)OJT20万円(11万円)
こちらの区分については1年度1事業所当たり5,000万円が上限です。
()書きは中小企業事業主以外に対する支給額になります。

主な支給条件

再就職援助計画対象労働者や特定受給資格者であれば、どのような就職経路でも対象になります。また、特定受給資格以外を雇入れる場合は、直前の離職企業でハローワークに再就職援助計画等の申請手続きを行っている必要があります。

期間の定めの無い労働者であれば、正社員で雇用しなくても構いません。社会保険加入基準に満たない労働者の場合は、社会保険に加入していなくても助成金の対象になります。ただし、雇入れに関する助成金のため、雇入れ後の前後6か月間に喪失原因3となる離職者(解雇や退職勧奨による退職)を出していないこと等の要件があります。

申請手続きのポイント

2024年度からは新たに、「離職前の毎月決まって支払われる賃金」から「再就職後の毎月決まって支払われる賃金」が5%以上上がっていないと対象にならない要件が出来ました。なお、グループ企業や親子会社間のいわゆる密接な関係のある企業からの転籍、雇用等は対象になりません。事業譲渡等を受けた手続きの際に離職を経ない場合(例えば雇用保険の適用事業所の新旧実態届を出した場合)は対象外になります。

人材育成支援に関する助成は、OFF—JT(いわゆる座学)以外にOJTに関する訓練も対象になります。人材開発支援助成金の各コースよりも高額な助成となります。令和6年度から会社都合等で離職して失業保険を受給している人(基本手当の特定受給資格者)も対象になりました。特定理由離職者等は対象外になります。雇入れ支援コースの対象となる「再就職援助計画等対象労働者」や「特定受給資格者」を優先的に雇入れたい等の相談がある場合は、求人を出しているハローワーク等にご相談下さい。

スケジュール

再就職援助計画対象労働者や特定受給資格者を離職して3か月以内に雇用します。その後、6か月間定着させ、その後の2か月間に支給申請を行います。助成額の対象になる人材育成は採用後6か月間のものになります。

おススメする企業

この助成金は、失業無く労働移動を目指すためのもので、離職前にあらかじめ雇用の予約があった場合や正社員雇用をいきなり行っても対象になります。離職前の事業主が再就職援助計画等の作成をしている条件があるため注意が必要です。令和6年度から特定受給資格者も対象に拡大されました。

事業譲渡等に関与する担当者は、再就職援助計画等を離職前に作成することが必須と言えます。再就職援助計画対象者は、一定の条件を満たすと常用就職支度手当の対象になる等の労働者本人のメリットもあります。この助成金は、労働者の早期再就職と定着を支援するための重要なツールと言えるでしょう。

(参考)厚生労働省:早期再就職支援等助成金雇入れ支援コースのご案内(令和6年4月1日)

【4】両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース)

助成金の概要

2024年1月から新設された両立支援等助成金育休中等業務代替支援コースは、育児休業や育児のための短時間勤務制度を利用する労働者が生じた際の業務を代替するための体制整備として、育休休業取得者や育休のための短時間勤務制度利用者への手当支給や育休休業取得者の代替要員の新規雇用を支援します。

〇支給額

支給額(育児休業取得者/制度利用者1名あたり) 支給人数/回数
【1】手当支給等
(育児休業)
以下1、2の合計を支給。
1.業務体制整備経費:5万円
※育児休業期間1か月未満の場合は2万円

2.業務代替手当:業務代替者に支給した手当の総額の3/4 

<プラチナくるみん認定事業主は4/5>
10万円/月が助成金の上限
※代替期間12か月分まで対象
・1事業主1年度につき【1】~【3】の合計で10人まで

・初回の対象者が出てから5年間

※くるみん認定を受けた授業主は、令和10年度まで延べ50人を限度に支給
【2】手当支給等
(短時間勤務) 
以下1、2の合計を支給。
1.業務体制整備経費:2万円

2.業務代替手当:業務代替者に支給した手当の総額の3/4

3万円/月が助成金の上限
※子が3歳になるまでの期間が対象(支給申請は1年ごと)
【3】新規雇用(育児休業)「育児休業期間中に業務代替した期間」に応じて以下の額を支給。
・7日以上14日未満:9万円<11万円>
・14日以上1か月未満:13.5万円 <16.5万円>
・1か月以上3か月未満:27万円<33万円>
・3か月以上6か月未満:45万円<55万円>
・6か月以上:67.5万円 <82.5万円>


※< >内の額は、プラチナくるみん認定事業主への割増支給額

主な支給条件

この助成金は、育児休業取得者や育児のための短時間勤務制度利用者の業務を代替する周囲の労働者への手当支給等の取組や、育児休業取得者の代替要員の新規雇用を行った場合に助成します。新規雇用(代替要員の雇用)での活用が主になります。

申請手続きのポイント

この助成金は代替要員の要件が緩和になり使い易いコースになります。ポイントとしては、新規雇用により代替として入社する社員は雇い続けても問題ありません。ただし、代替えする業務が一部でもあり、所定労働時間も2分の1以上で無ければなりません。また、看護師や保育士等資格が必要な業務は同じ資格を持つものが代替要員で無ければなりません。1か月以上の育児休業の場合は原職等復帰が前提となります。

スケジュール

一般事業主行動計画を策定、両立支援のひろば等での周知、届出を行うとともに、最新の育児介護休業法に準拠した育児介護休業規定の整備を行います。育児休業取得者や育児休業取得後の短時間勤務者の仕事の代替えをする者に手当を支給するか又は育児休業する者の代替者を新規に雇用します。育児休業者については原職復帰してから3カ月後に支給申請します。短時間休業者に関しては1年毎に支給申請を行います。

オススメする企業

育児休業中の方の仕事を代替えするために、新規で雇用した、派遣社員を受け入れる企業は多いと思います。この助成金を活用することで新規雇用に係る経費を賄うことが出来ます。新規で受入れた人については、育児休業者の腹筋後も雇用し続けて構いません。

(参考)厚生労働省:両立支援等助成金の支給申請の手引き(2024(令和6)年度版)

【5】両立支援助成金・柔軟な働き方選択制度等支援コース

助成金の概要

2025年10月から育児介護休業法が改正され、小学校就学前までの育児を行う労働者の柔軟な働き方を可能とする制度を複数導入することが義務化されます。両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)は、小学校就学前までの育児を行う労働者が柔軟な働き方を選択できる制度の利用支援を目的としています。

主な支給条件

対象となる事業主は、育児を行う労働者の柔軟な働き方を選択できる制度を導入し、その制度の利用及び利用後のキャリア形成を円滑にすることを社内で周知し、対象労働者と面談を実施し、その結果を踏まえて「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」を作成し、開始から6か月間で柔軟な働き方を可能とする制度を基準以上利用します。

助成額は、柔軟な働き方選択制度等を2つ導入し、対象労働者が制度を利用した場合には20万円、3つ以上導入し、対象労働者が制度を利用した場合には25万円となります。

ただし、1年度あたり1事業主5人までが対象となります。制度利用は対象の子の3歳以上で小学校就学前までの期間で設けることとなりますが、3歳未満の子を対象とする育児も対象とする制度を導入することになります。ただし、利用実績として短時間勤務制度は対象になりません。

制度名称フレックスタイム制/
時差出勤制度         
育児のためのテレワーク等            短時間勤務制度       保育サービスの手配・費用補助制度               子の養育を容易にするための休暇制度/
法を上回る子の看護休暇制度                 
導入すべき主な内容始業・終業時刻や労働 時間を労働者が決定/ 始業・終業の1時間以上の繰り上げ・繰り下げ勤務日の半数以上利用可能時間単位利用可能1日1時間以上の所定労働時間短縮

1日6時間以外の短縮時間も利用可能
一時的な保育サービスを手配し、サービスの利用に係る費用の全部または一部を補助有給、年10日以上取得可能、時間単位取得可能な休暇制度
利用実績の基準合計20日以上制度利用労働者負担額の5割以上かつ3万円以上、または10万円以上の補助合計20時間以上取得

※異なる制度を同一期間に利用した場合、利用実績を合算することはできません。

申請手続きのポイント

利用実績が6か月間で一定以上必要なため、利用実績を得ることが難しいと言えます。既にフレックス制度やテレワーク制度で働いている者は育児のためのフレックス制度や育児のためのテレワーク制度の導入実績にはなりません。導入及び利用実績を図り易い制度は育児目的休暇(子の養育を容易にするための休暇制度)又は子の看護休暇ですが、年10日以上の有給休暇制度導入及び合計20時間以上の利用実績が必要になります。

スケジュール

柔軟な働き方を支援するために、育児に係る柔軟な働き方支援プランを策定していくことを周知する必要があります(原則、育児介護休業規定に規定します)。その後対象労働者との間で「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」を作成し、柔軟な働き方を適用します。6か月間で一定以上利用実績があった場合支給申請を行います。

オススメする企業

2025年10月からの育児介護休業法改正を先取りして、小学校就学前までの育児を行う労働者を支援するために複数の柔軟な働き方の制度を整備する企業に向いています。複数の労働者が小学校就学前の子供を育てている企業に向いています。

(参考)厚生労働省:両立支援等助成金の支給申請の手引き(2024(令和6)年度版)

まとめ

雇用関係助成金は、事業主負担の雇用保険料を財源としていて、法本文ではなく、多くの要件は施行規則や支給要領等の通達で規定されています。支給要件は頻繁に改正され、直近では不適正な受給や不正受給が頻発していることもあり、要件が厳しくなり審査が厳格化されています。詳しい支給要件は、書ききれないので、各労働局やハローワークでの確認が必要です。上手に活用して企業内での人材活用に役立てましょう。

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